未来を見据え、化学と技が融合した精密技術

無電解ニッケルめっきは硬質クロームめっきとは異なり、電気を作用させる必要のない化学的還元を利用した化学めっきであります。
このため金型全面において電流密度の差などが存在せず、複雑な形状をした金型に対してもほぼ均一な膜厚のめっき皮膜が提供できることを最大の特徴としております。その膜厚の部分的誤差は±10%以内であり、精度を必要とする金型に向いています。
当社は一般的な無電解ニッケルめっきであります「M電めっき」と、離型性に優れた特徴を持つ「FMめっき」をご提供しております。

M電めっきの皮膜特性

● 硬  度··· 500~600Hv(ビッカース硬度)
400℃で熱処理することにより900~1000Hv
● 皮膜組成··· ニッケルとリンとの合金
ニッケル-90~92%
リン-8~10%
● 結晶構造··· 析出状態では非晶質に近く、熱処理することにより結晶化して硬化現象を示す。
● 耐 食 性··· 皮膜厚さの均一性などにより良好であり、硝酸を除く酸、有機溶剤および苛性ソーダ等のアルカリに対しても、優れた耐食性を示す。
● 磁  性··· 非磁性。熱処理すると磁性を帯びる。
● 溶 融 点··· 約890℃
● 離 型 性··· 硬質クロームめっきと同等かやや優れている。
M電めっきとFMめっきの処理可能寸法と重量
● サイズ:約500mmX800mmまで ● 重量:150kg以下

FMめっきの皮膜特性

● 硬  度··· 400~500Hv(ビッカース硬度)
400℃で熱処理することにより600~700Hv
● 皮膜組成··· ニッケルとリンとの合金にフッ素樹脂を共析
ニッケル-88~90%
リン-7~9%
フッ素樹脂-2~4%(体積比にて)
● 離 型 性··· 硬質クロームやM電めっきよりも優れている。
※ 他の特性は、M電めっきに準ずる。
M電めっきとFMめっきの処理可能寸法と重量
● サイズ:約500mmX800mmまで
● 重量:150kg以下

精硬クローム工業の無電解ニッケルめっき

無電解めっきに不向きなゴム金型

無電解ニッケルめっきは、ベースの金属がニッケルであるため、原則として当社では硫黄加流のゴム成型金型には化工しておりません。それは加流時に発生する硫黄系のガスが、金型表面のニッケル金属と反応して、離型性が極めて悪い皮膜に変質してしまうからです。したがって無電解ニッケルめっきは、一部を除き通常シリコンゴム成型金型用として化工しております。

無電解ニッケルめっきの剥離技術

ゴム成型用金型にとりまして金型の設計変更や改造、修理等は常に要求されるところです。その際、めっき皮膜を剥離することが必要になりますが、特に無電解ニッケルのめっき剥離には注意しなくてはなりません。ややもすると大切な金型の素地を浸してしまう心配があるからです。当社では、長年に渡る実績と研究に裏付けされた、無電解ニッケルめっきの剥離技術を持っております。